もりさんの名作絵本
アニメーションの仕事の傍ら、もりさんはたくさんの絵本を出している。新しく創作されたの絵本もあるけれど、なんといっても世界の童話のものが多い。講談社、小学館、ポプラ社の大手三社からそろって出すという快挙だ。各世代の人々は、もりさんの絵を見ずに幼児時代を過ごせなかったことだろう。もりさんの名は知らない人も、この絵なら知っている、というはず。1970年代は講談社から「幼稚園百科」シリーズが出ている。「あかずきん」「みにくいあひるの子」「おむすびころりん」「ひこいちとんち話 」「グリム童話」「シンデレラ」「にんぎょひめ」「マッチうりのしょうじょ」「フランダースのいぬ」「ははをたずねて三千里」「あかいくつ」「おやゆびひめ」「オズのまほうつかい」「家なき子」などが出版された。1980年代になると講談社の「新幼稚園百科 」として、新しく「おおかみと七ひきのこやぎ」「マッチうりのしょうじょ」「つるのおんがえし」「おやゆびひめ」「みにくいあひるのこ」「おむすびころりん」「イソップどうわ2」「三びきのこぶた」「シンデレラ」を新作している。(多くは背景を背景美術監督の伊藤主計さんが制作している共作) 小学館からは、50年代から幼年雑誌や学習雑誌の多くにイラストを提供しているが、名作絵本としては、「いそっぷえほん」(1968年)、「オールカラー版世界の童話33アンデルセンの絵物語」(1960年)をはじめ「少年少女世界の名作童話グリム童話」(1961年)、小学館の絵本(B5版)シリーズ、「小学館の育児絵本」シリーズ、「小学館の保育絵本」シリーズ、「フォト絵本」シリーズなどなど数えきれない。ポプラ社ではオールカラー名作絵本の名で「おやゆびひめ」(1971年) 「シンデレラひめ (1972年) 「つるのおんがえし」(1972年) を出版している(背景は美術監督の浦田又治さん)。
これら名作絵本では、もりさんの絵はセル画に彩色され、背景もアニメーションの美術監督が共作しているので、アニメーションの場面写真そのもののように見える。幼児にも受け入れやすいスタイルであることは、数の多さからいってもあきらかだ。最近は絶版になっていることが多いようだが、復刊を強くのぞみたい。